ITCは副業。「本業は大好きな“昆虫業“です!」

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ITコーディネータの「働き方改革」
~準備できてますか?兼業・副業・セカンドキャリア~

−ITC 一色正典氏(京都府向日市)−

機関誌「架け橋」25号(2018年下期号)に掲載されましたのでご紹介致します。
ITコーディネータ協会サイトからPDFをダウンロードできます。


1.子どものころから好きだった昆虫を扱う仕事で独立

京都府向日市に住む一色正典氏は、昆虫業を本業にしている一風変わったIT コーディネータである。
しかし、彼の仕事ぶりを聞くと、これからのIT コーディネータの新しい形が見えてきた。

一色氏は「本業は昆虫業。これで生活している」ときっぱりと言う。
昆虫の標本で小学校2 年から宮崎県の県知事賞を毎年のように受賞していたという一色氏は、幼いころよりクワガタの標本作りのマニアだった。

死んでしまった昆虫を捨てるのではなく、残しておきたいという思いが子どものころからずっと持っていた。
1990 年代、IT企業に勤めていた時代に、オオクワガタの生態が解明されて、高価なものは1 匹数百万円もするという時代を迎えた。昆虫ブームの始まりだった。

「僕もオオクワガタの養殖を始めて、ペットショップに売ったりしていた。それでも余るので、それをネットでも売り始めた。1997 年のころでした。
当時はクワガタをネットで売っている人は他にはいなかったです」 ネットショップの開業に合わせて、HTML の記述などの勉強もした。

ちょうど、勤めていた会社では新規採用で入ってくる人材も多くなり、退職する人が多かった。一色氏も、このままこの会社で働いていると病気になると思い、39 歳で退社した。

そして、養殖やネット販売を始めていてすでに下地ができていたので、店舗を開くことにした。ちょうどいい物件が近くにあり、現在の場所に「オオクワ京都昆虫館」という店舗を構えた。2000 年6 月のことだった。

店舗の売り上げは大きく、最初のころは店が9割以上でネットは1 割程度だった。現在も店の売上が6 割を占める。
そして、そのあとすぐに「ムシキングブーム」がやってきた。ムシキングとはセガのトレーディングカードアーケードゲーム「甲虫王者ムシキング」のことで、当時は子どもだけでなく大人もこのゲームに夢中になっていた。

このムシキングブームによって、外国からヘラクレスやコーカサスオオカブトといった図鑑でしか見たことがないようなものが輸入されるようになった。店舗でも、1 匹何十万円もするクワガタが飛ぶように売れた。いわゆる“ クワガタバブル” の時代だった。

現在はムシキングブームのころに比べると、販売価格は1 桁違う。しかし、飼育用品も低価格になり、ファミリーで買いにくる人が多くなった。また、知識もネットで調べられるので、養殖も誰にでも手軽にできるようになった。

そして、2012 年ころからは養殖した昆虫をネットオークションで販売する人も多くなってきた。ファミリー層は3 割ほどを占めるようになり裾野が広がったが、一方でコアな客はいまだに40代以上のシニア層となっている。

ムシキングブームのころは京都だけで専門店は10 店舗あったが、今では2 軒だけになった。近畿圏でも10店舗あるかないかだ。なので、顧客も遠方の方が多く、「今では希少な店になっている」と一色氏は言う。

ITC架け橋25号 一色正典 01


2.シーズンオフを利用してITの支援をスタート

昆虫シーズンは6 月から9 月にかけてだ。そのため、それ以外の時期はシーズンオフになる。シーズンとシーズンオフでは、忙しさは全然違う。
そんなシーズンオフを利用して始めたのが、IT 関連の仕事だ。

一色氏は店舗がある向日市商工会に所属していた。2008 年ころに商工会からネットショップについての相談があり、セミナーの講師を依頼された。

会員にはそのような知識を持っている人はほとんどいなかった。サラリーマン時代に、php やJava スクリプトの知識は身に付けていたし、HTHL も手打ちで書けるので商工会の中では一目置かれていた。

「クワガタ屋さん、何でそんなのができるの?」と近くの商店主からよく言われていたと言う。そして、セミナーの講師だけでなく勉強会も開催し、商店主を対象にネットショップのノウハウを教えた。

「そのときに教えることの楽しさを知りました。しかも、ネットショップがうまくいくと、教えた方からはすごく感謝されるのです。そういう感覚は今までなかった」
商工会の職員からも喜ばれ「それだけのスキルがあったら、ただで教えてもらうのは申し訳ない」と言われた。
シーズンオフは時間を持て余していたので無料で指導してもよかったが、その職員の勧めで京都府商工会連合会のエキスパートバンクの専門家登録をした。2009 年のことだった。
登録してからは、中小企業からの相談も多くなった。

ただ、企業を支援してみて、独りよがりの知識しか持っていなかったのを身に染みて感じた。企業の経営課題の分析がまったくできなかったのだ。
そこで勧められた資格がIT コーディネータだった。

それまではネットショップの開店のように実務から相談に入っていったが、ITコーディネータの資格取得後は経営環境分析から手をつけるようになった。
企業にとっては、やるべきことが見える化できたということで、そのアプローチはとても好評だった。
そして、営業しているわけでもないのに、支援依頼が口コミでどんどん来るようになった。多いときは年間70件以上の相談を受け持った。ミラサポだけでも60 件は担当した。

IT コーディネータの資格を取得して支援の幅は広がったが、一色氏はこうも語る。
「資格を取ったから終わりではない、資格習得で学んだことを実践して応用しないと身に付かない」
他のIT コーディネータからよく聞くのが「ケース研修のときにやった手法は、あのとき以来使っていない。機会がない」。
特に企業内のITコーディネータからはそんな声を多く聞くと言う。

ITC架け橋25号 一色正典 02


3.「萬平さん」のように好きなことを極めることが大切

IT 関連の収入は、今は3 割まで増えている。
しかし、「IT の支援はあくまで副業で、これで食っていくつもりはないです。社会貢献のつもりでやっています」と一色氏は語る。

支援をした企業から、その後、“ 民民契約” でお願いしたいという申し出も多い。しかし、本業ではないのでいつも断っていた。
ただ、商工会議所や商工会の職員からは、企業と契約を結ぶことも真剣に考えたらどうかと言われ始めるようになった。なので、今後は契約を結ぶことも検討していきたいと一色氏は言う。

最後に、副業についてのアドバイスを聞いみた。
「自分の得意分野を生かし、最新の知識・技術ノウハウを生かすことがポイントになると思います。
朝ドラ『まんぷく』の萬平さんではないですが、好きなことを極めるのは本当に楽しいです。それが自然とビジネスにつながっていくと思います」

「萬平さん」のように好きなことを極めることが大切ソレイユアイティ経営オフィス&オオクワ京都昆虫館

ITC架け橋25号 一色正典 03

奥さんと一緒に「オオクワ京都昆虫館」の前で 一色正典氏

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